熟成チーズに寄り添うワイン
by A. Madoka
ワインとチーズは王道のマリアージュですね。
秋の深まりを感じ、熟成感のあるチーズを
赤ワインに合わせてみたくなりました。
チーズ専門店へ行くと、さまざまな産地、タイプのものが
揃っていて、目移りしてしまいます。
店員さんに相談しながら、個性の異なる3種類を選びました。
右奥は、フランスの中でもスペイン国境に近い南部
ピレネー地方のエルキュール(Hercule)
山羊と羊のミルクを混ぜてつくるユニークなチーズ。
10カ月以上熟成させた、コクのあるタイプです。
その手前が、シロネ(Cironé)16カ月熟成
スイスでつくられた、牛のミルクのチーズ。
ホロっと砕ける、パルミジャーノ・レジャーノのような質感です。
左は、ラングル(Langres)
産地はフランス北部のシャンパーニュ地方。
牛乳を原料に表面を塩水で洗いながら
熟成させるウォッシュタイプです。
さて、選んだワインは、
ニュージーランド、セントラル・オタゴの
アミスフィールド ピノ・ノワール 2017
ニュージーランドワインが
世界的に注目されるようになったのは、
1980年代後半のソーヴィニョン・ブランの登場、
続いて1990年代末のピノ・ノワールの登場によって。
つまり、ごく最近のことです。
そのため、産地の選定や栽培・醸造技術などを先進産地から
取り入れられたというメリットがあり、
短期間で優れたワイン産地へと成長しました。
南島に位置するセントラル・オタゴは、南緯45度に位置し、
世界最南端のワイン生産地のひとつです。
昼夜の寒暖差が非常に激しいため、
酸を保ったまま、ブドウが良く熟すという特性があり、
ピノ・ノワールの銘醸地として生産の約7割を占めています。
アミスフィールドのワイナリーと畑は
標高230mの場所に位置。
2008年からワインメーカーを務める、
ステファニー・ランバード氏(写真)は
アデレード大学でワイン醸造学の博士号を修めた後、
オーストラリア、オレゴン、ブルゴーニュ、
そして、ニュージーランド シレーニ・エステートで
経験を積んできました。
このピノ・ノワールは果梗(茎)も一緒に全房で発酵。
醸造には形状の違う2種類のステンレスタンクが用いられ、
手間をかけてブドウの味わいを引き出します。
角型タンクで完熟ブドウの豊かな果実味や力強さを、
小さな円筒形タンクではエレガントな風味を、
じっくりと引き出してから、ブレンド後、
フレンチオーク小樽で12カ月間熟成されます。
色調は、深みと落ち着きのある美しいルビーレッド。
プラムやブラックカラントの果実香に、
心地よく鼻をくすぐる黒コショウのようなスパイス感。
口に含むと、優しくなめらかな口当たりの中に、
甘酸っぱいベリーを思わせる豊かな酸が広がります。
そして、スミレの花のようなアロマが美しく際立って、
きめ細やかなタンニン、カカオのようなニュアンスを伴い、
複雑な余韻が、何とも心地よく続きます。
チーズを味見しましょう。
エルキュールは、羊乳と山羊乳の混乳チーズ。
羊の放牧の際に、少数の山羊も一緒に飼われていた、
昔ながらの伝統に由来するそうです。
香ばしいナッツのような香りが食欲をそそります。
食感はなめらかで、キャラメルのような
煮詰めたミルクの風味が印象的。
コクの中に包まれた、まるみのある塩味が後を引きます。
ワインを口に含むと、きれいな酸が際立って、
果実味がフルーティにいきいきと若返るような印象です。
次はシロネを。
黄味がかった色味で、舌の上でほろりとくずれるような食感。
コクがあり、ミルクの甘みと旨みがギュッと凝縮しています。
ワインのタンニンと、熟成を経た旨みが、
チーズの濃厚な味わいに調和し、より長い余韻を感じます。
最後に、ウォッシュタイプのチーズ、
ラングルと合わせました。
室温になじむと、とろりとした質感に。
表皮から、発酵食品独特の香りが漂います。
スプーンで口に運ぶと、とろけるような食感。
熟成の旨み、クリームのように贅沢な味わいが、
ゆっくりと口の中を満たしていきます。
そして、ワインをひとくち口に含むと、
不思議とブドウの甘みが際立ちました。
ブルーベリージャムのような濃密な甘みを感じ、
チーズに、より親しみやすさ、まろやかさを
与えてくれるようです。
今回は3種類を試しましたが、
チーズの味わいによって、ワインの表情が変わるのが
楽しいですね。
さまざまな味わいに寄り添って花開くような、
ワインそのもののポテンシャルの高さを感じました。
ぜひ、お好みのワインとチーズの組み合わせを
探してみてください。
それでは、みなさまの食卓が、
素敵なワインで心豊かになりますように。
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